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STORY 10

Auteur: 笠井未久
last update Date de publication: 2026-05-29 09:33:29

 どうして今更。こんな偶然なんてありえない。

 ハザードランプをつけて降りてきた人は、相変わらずすごいオーラを放っていて、無意識に一歩後ずさる。

 そしてすぐに私は走り出した。それは計算したものではなく、なぜか彼から逃げなければと咄嗟に思った。しかし、サンダルが引っ掛かり、転びそうになってしまう。

 支えられるように手を掴まれて、私は驚いて彼を見据えた。

「子供は!?」

「どうしてそれを……」

 つい零れ落ちてしまったそのセリフに、私は一瞬で青ざめた。

 今の言葉は、子供の存在を認めてしまったということだ。

 あの夜以来、久しぶりに見た恭弥さんは、少しやせた印象も受けたが、ビシッとスーツを着込んでいて、ほとんどノーメイクの私とは別世界の人だということを実感する。

「どうして連絡しなかった!」

 強い口調の彼に、私はキュッと唇をかみしめる。どうして二年ぶりに急に現れて、こんな言われ方をしなければいけないのだ。

「連絡して欲しかったんですか?」

「当たり前だろ!」

 即答されるも、自嘲気味な笑みがこぼれる。

「どうして? 元樹から私を離すためだけに、私を抱いたくせに」

 自分で放った言葉
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  • パパになった冷徹御曹司の溺愛は止まらない   STORY 10

     どうして今更。こんな偶然なんてありえない。 ハザードランプをつけて降りてきた人は、相変わらずすごいオーラを放っていて、無意識に一歩後ずさる。 そしてすぐに私は走り出した。それは計算したものではなく、なぜか彼から逃げなければと咄嗟に思った。しかし、サンダルが引っ掛かり、転びそうになってしまう。 支えられるように手を掴まれて、私は驚いて彼を見据えた。「子供は!?」「どうしてそれを……」 つい零れ落ちてしまったそのセリフに、私は一瞬で青ざめた。 今の言葉は、子供の存在を認めてしまったということだ。 あの夜以来、久しぶりに見た恭弥さんは、少しやせた印象も受けたが、ビシッとスーツを着込んでいて、ほとんどノーメイクの私とは別世界の人だということを実感する。「どうして連絡しなかった!」 強い口調の彼に、私はキュッと唇をかみしめる。どうして二年ぶりに急に現れて、こんな言われ方をしなければいけないのだ。「連絡して欲しかったんですか?」「当たり前だろ!」 即答されるも、自嘲気味な笑みがこぼれる。「どうして? 元樹から私を離すためだけに、私を抱いたくせに」 自分で放った言葉が、自分を傷つける。そんなことわかっていたのに、私の口からは次々と言葉が零れ落ちる。「なんでしたっけ? あなたと寝なければ、あのバーテンダーと寝てたんでしたっけ?」「それは――!」 まさか起きていたとは思っていなかったようで、恭弥さんの顔色が変わる。 さきほどまで私を責めていた時とは違い、顔が真っ青だ。「それに、どうして今更? あれから何年経ったと思ってるんですか? 私が連絡しなかったから何なんですか?」 もう止められなかった。彼だけを責めることなどできないとわかっていたが、いきなり現れてこんなことを言われたくない。 そこへ、道路をふさいでいた彼の車に、後ろから来た車がクラクションを鳴らす。「咲良、お願いだ。話がしたい」「私はありません」 即答すると、恭弥さんは何かに耐えるような表情を浮かべた。「話し合いに応じてくれなければ、親権を争ってもいい」 想像もしていなかったそのセリフに、私はキッと彼を睨みつけた。「信じられない……」 血が滲むほど、私は自分の手を握りしめていたと思う。こんな人をずっと想っていた自分に嫌気がさす。「何時なら出られる? 迎えに行く」

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